小林SVP: ナマケモノ倶楽部と辻先生のご関係のところからお聞かせください。
辻先生: 中南米の森に暮らしているナマケモノという動物の生き方からいろいろと学び、「スロー」を合言葉に活動しています。日本人は働きすぎで、忙しくて、いつもイライラしています。子供たちにまで急かせていますよね。自然環境や大切な人とのいい関係も壊れてしまっています。そういうことを何とかしたい。もっとゆっくり暮らせる社会をつくりたい、と考えて「スロー運動」を始めました。
小林SVP: 辻先生との出会いはエネルギー関連のパネルディスカッションをご一緒したときでしたよね。そのときに、先生にそういうお話しを伺いました。
私たちスーパーマーケットという業界は、今お話いただいた「スロー」とは正反対のところに位置しているわけで、今後、私たちはどうしていくべきか、私たちができることは何だろうと模索していました。ちょうどそんな時、先生にお会いして、「常に否定するのではなくて、それぞれの立場でできることがある。そういうものを持ち寄りながら、少しずつ良い世の中になっていけばいいのではないか」ということをおっしゃっていただいたことがすごく印象に残っています。
それでは自分たちにできることは何だろう、と考えた結果生まれたのが、子どもたちに社会環境学習の場を提供する「エコ・ニコ学習会」でした。
「エコ・ニコ学習会」を始めようと思ったもう1つのきかっけは、セヴァン・スズキさん※の12歳のときのメッセージに出会ったことです。ここでも辻先生はセヴァン・スズキさんとの繋がりがあって、ナマケモノ倶楽部と一緒に「エコ・ニコ学習会」のコラボレーションをさせていただいたこともありましたね。
そして、今回はまた「ハチドリキャンペーン」に出会えました。私たちは種々雑多な商品を販売していますが、消費者の皆さんに賢い消費者になって欲しいというメッセージをしたり、「もったいない」ということをお互いに確認しようという動き方を、あえて私たちがやらなければいけないと思っています。そこで先生にご相談して完成したのが、クリキンディの物語をモチーフにしたハチドリバッグです。お客様にどう支持されていくか、ドキドキしています。
※セヴァン・スズキ : 環境活動家。12歳の時にブラジルのリオ・デジャネイロで開催された国連の地球サミットでのスピーチは世界中を感動させた。現在はカナダのヴィクトリア大学大学院で民族植物学を専攻中。
Profile

環境運動家、明治学院大学国際学部教授。「ハチドリキャンペーン」のベースとなったNGO団体「ナマケモノ倶楽部」の代表として積極的に活動中。
主著に『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)、『ハチドリのひとしずく』(光文社)など。
辻先生: 20〜30年前は、無駄なものをつくって消費して捨てるという時代のシンボルのようなところに、スーパーマーケットは残念ながらあったかもしれない。でもそれは長続きしないということ、その流れを大きく変えていかなければならないことを経営者は知っています。今の時代、「もったいない」ということを教えて広めるには、スーパーマーケットはすごくいい学校なのかもしれないですね。コミュニケーションの場として捉え直したら、ものすごい役割を担っていくと思います。
小林SVP: 今、私たちはサステナビリティを進めています。お店の中で一生懸命に仕事をしてくださっているアソシエイトの方々に、私たちがやっていることをどう効率よくできるか、どう無駄を省けるかとか、もったいない探しをしています。そうすることで環境にも良く、会社にとっても利益になります。
辻先生: その社内のもったいない探しが1つの始まりですね。こういう発想の転換をみんなで考えてやっていくと、次から次へといろいろなアイデアが出てくるのではないかなと思います。
小林SVP: 実際、アソシエイトの皆さんから環境にもよく、コストもかけない良いアイデアがたくさん出てきました。大型家具を納品する際の段ボールでの梱包を削減するために繰り返し使える梱包材を開発したり、車に乗らないで自転車に乗ろうと決めた人のために「ハチドリ号」という自転車をつくりたいとバイヤーからアイデアが出てきたりと、今は全社的にずいぶん意識が変わってきました。
辻先生: インターフェイス社の創業者レイ・アンダーソンが、社員全員に対して「会社を変えるために、どんな小さなことでもいいから社長も社員もみんなでアイデアを持ち寄ろう」と呼びかけました。コピーのときに裏紙を使うことから、電気をこまめに消すことから、大きなところではものを売ることからリースへと商売そのものを転換していきました。それまでは、誰か1人がちょっと世の中を変えるようなことをすると、ハチドリの話のように、「そんなことをやって何になるの」と笑われてしまうこともありました。こんなとき、ビジネスリーダーが自らハチドリであることを示せれば一番いいですよね。1人ひとりの個性や違った発想が評価される文化が醸成されれば、まさにハチドリがどんどん生まれてくるのだと思います。





